インドネシア留学 ~持続可能な水環境を目指して~

将来、東南アジアを中心とした水環境保全に貢献するためにインドネシアで修行中です。

unicefにて「水と衛生」についてお話頂き感じたこと

 

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今回、unicefジャカルタにて、インドネシア国内で行っている活動について日本人の職員の方からお話を頂く機会がありました。

 

 

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unicefオフィスがあるビル尾エリアに入るゲート、さらにはエリア内の一つ一つのビルの入り口でも手荷物検査などを行う厳重な警備が行われています。近年ジャカルタで発生しているテロが影響しているようです。

 

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ゲートをくぐると、外資銀行などの立派なビルが立ち並ぶ区画があり、その一角にunicefジャカルタがあります。

 

「トイレが無い」ことにより生じる健康問題

 

 unicefは、「すべての子どもが公平なチャンスを得られる世界を目指して」をモットーに世界中で活動していますが、その重要な活動分野の一つに「水と衛生」があります。

 

この分野は、SDGs国連本部で採択された持続可能な開発目標)でも早急に解決すべき課題として位置づけられています。

 

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SDGs目標6より)

 

この目標に向け、unicefジャカルタが行っている具体的な活動に、トイレの普及活動があります。日本に住んでいると、トイレが各家庭についているのは当たり前ですが、インドネシアではトイレが無いために、川など屋外で排泄をする人が国内に約5000万人ほどいます。これは世界でも2番目に多いと言われています。

これにより生じる不衛生な環境が原因で、年間約15万人の子どもが、5歳になる前に下痢により亡くなっているそうです。具体的な下痢を引き起こす経路としては

 

①オープントイレ(トイレを使用しない屋外での排泄行為)により水源が汚染される

②発生したハエ、そこで遊ぶ子どもなどを媒体とし、排泄物が家庭内に入り込む

③それにより汚染された、高濃度の大腸菌を含む飲料水を飲むことにより下痢を引き起こす

 

といった流れになります。実際に、トイレを使用せず、川など排泄をしている家庭の子どもが、自宅にトイレを持つ家庭の子どもに比べ、約66%も下痢で苦しむ子どもの割合が高いことが分かっています。このような課題を改善すべく、unicefインドネシアは政府などの協力機関とともに、トイレの設置、普及活動などを行い、衛生環境改善に取り組んでいます。

 

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unicefインドネシアHPより)

 

しかし、新しくトイレを設置すれば、はい、問題解決、と簡単にはいかないようです。

 

トイレ普及を拒む難しい課題とは

 

生まれながらトイレが無い生活を送ってきた住民たちは、「そもそも何でトイレを使わなきゃいけないの?」と利用する理由を理解していないケースがあるそうです。そのため、新たに設置したトイレが利用されずに放置されてしまう場合も少なくないのだそうです。

また、宗教的な慣習などが適切なトイレ利用の障害になるといった問題も存在します。我々日本人にとってなじみの薄い宗教ですが、それが人々に与える行動様式、習慣への影響は極めて大きく、時にはこのような課題に繋がってしまうこともあるようです。

 

このような現状を改善すべく、unicefでは設置の際にトイレを利用することの重要性を伝える教育活動や、設置されたトイレが適切に利用されているかどうかを確認する調査などの活動を行っています

 

正直、トイレがある生活が当たり前の環境で育った私たちには、「トイレがあるのに使わない理由が分からない!」と思ってしまうのが実際のところですが、自分の中の物差しだけでなく、相手の立場で問題を考えていかなければならない、というグローバルに活動する上で必須の考え方について再認識しました。これについては頭では分かっていても実施するのはかなり難しいことだなと思います。

 

そして、水に関する衛生問題を解決する際には、設備といったハード面だけでなく、人々の意識や習慣、文化を根本から理解した上での教育活動、といったソフト面の重要性を改めて感じました。ここが不十分だと、新たな設備を導入しても慣れ親しんだスタイルを変えてもらうだけの説得ができません。結果として住民の環境改善意識を高めることができず、ただの技術の押し売りになってしまいます。

 

よって、人々の行動指針を形成する文化や宗教といった抽象的な事柄と、製品や技術開発を切り離して考えるのではなく、全ての繋がりを意識した技術開発体制を整えることが課題解決には不可欠だと感じた次第です。

 

 

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unicef訪問時の写真  左から・Herto先生(バンドン工科大学)、小田切様(unicef 職員)、山村先生(中央大学